スライドの役割と落とし穴

■違いを生み出すスライドのコツ

 パワーポイントなどの視覚に訴えかける表現は、今やプレゼンに欠かすことのできないツールです。そして、手軽に作ることができるだけに、世の中に氾濫し、その分差がつきやすくなっています。
 聴衆の理解を助け、あなたの強い味方となるような、そんなスライドを作るには、どうすればいいのでしょう?
 そのためにはまず、スライドに対する、最悪な考え方を捨てるところから始めましょう。
 その考え方とは何か? それは、手元資料をスクリーンに映し出したものがスライドだ、という考え方です。
 プレゼンでは、多くの場合手元資料が配られます。
 そしてさらに多くの場合、スクリーンにも同じものが映し出されます。
 文章とグラフで埋め尽くされ、まるで視力検査のような字の大きさの…
 このスライドを使う意味とはなんなのでしょう? 聴衆のほとんどは、「それは書いてあるだろう」と思っているに違いありません。そして次に、「帰って読めばいいや(実際には、読みもしないのですが)」となり、意識は別のところにトリップしていきます。
 このような悲惨な状況にならないよう、プレゼンのスライドを手元資料そのままにするのは避けるべきです。
 そもそも、対面でのプレゼンの目的は、あなたの情熱を伝えることです。
 メールでもいいだろう。後で資料を送ってよ。
 それではダメなのです。なぜなら、そこに「あなた」はいないのですから。
 対面でのプレゼンで聴衆は、今、そこにしかいない「あなた」から価値を受け取るのです。
 スライドは、その目的に沿って、あなたを補助するものであるべきです。
 そのためには、1枚のスライドに含める情報は、1つにとどめましょう。
 そして、スライドの枚数も、多くても5枚にとどめましょう。
 つまり、スライドで伝えられる情報は5つまで。
 そう考えてスライドを作っていきましょう。ここでも、大切なのは「引き算」です。
 無駄な装飾は、できる限り省きましょう。アニメーションも同じです。
 大切なのは、美しくこったスライドではなく、あなた自身に注目してもらうことなのです。

原稿準備で無駄な言葉を省く

■ 上手に話すコツ

 プレゼンの構成や内容が決まったら、次にそれを、まさに「プレゼンテーションする」断に入ります。
 プレゼン(スピーチ)の達人と言われた、アメリカ合衆国初代大統領リンカーンは言いました。
 「もし、木を切り倒すのに8時間与えられたなら、私は6時間を斧を研ぐのに費やすだろう。」
 良い準備が、良い結果を生み出します。そしてこと、「話す」ということについて、多くの人は準備が十分でないか、準備の内容を知りません。
 あなたが、プレゼンで違いを生み出したければ、あなたのパフォーマンスを改善する必要があります。
 では、プレゼンを行う前に、どのような準備をすればいいのでしょう?
 まず、スピーチ原稿を準備しましょう。慣れないうちは、用意した原稿の一言一句を暗記するぐらいの準備が必要です。では、なぜ原稿が必要なのか?
 それは、無駄な言葉を避けるためです。
 私たちの日常会話は、無駄な言葉であふれています。それ自体は悪い事ではないのですが、メッセージを伝えたいときには邪魔になります。そして厄介なことに、緊張すればするほど、無駄な言葉は増えていきます。
 無駄な言葉にはどのようなものがあるのでしょう?
 「あー、えーと、そのー」といった、場つなぎの言葉。「これからプレゼンをしたいと思います(正しくは、「プレゼンをします」ですよね)」といった、意味のない文句。意図的でない、同じ言葉の繰り返し。並立でない並立(「大切なのは、準備や、準備なのです」のような)。
 ノイズでしかない、これらの無駄を省くには、原稿を準備することです。文章を書くとき、「えーと」と書く人はいません。また、読む(視覚・聴覚的に確認する)ことで、自分の表現の癖や無駄を見つけることができます。このことは、非常に重要なのですが、世の中にあふれる「プレゼン」を見る限り、十分に注意を払い、準備をしている人が少ないと思われます。こうした無駄は、聞きにくいだけでなく、あなたの知性への疑いを生み、二重の意味でメッセージを伝わりにくくしてしまいます。
 演劇の役者のような言い方を訓練する前に、まずはあなたの「語ること」を整理してください。

引き算の発想

■ 全ては「引き算」で考えろ!

プレゼンをするときには、「伝えたいこと」と「伝えるべきこと」をわけて考えるようにしましょう。準備をしているあなたは、伝える内容の全てを知っています。ですので、あれも伝えたい、これも伝えたい。と考えてしまいます。ですが、その「伝えたいこと」をすべてプレゼンの内容に入れてしまうと、多くの場合、与えられた時間に対し、伝えることが多くなりすぎ、分かりにくいものになってしまいます。
 分かりやすいプレゼンの代表格ともいわれる、スティーブ・ジョブズのプレゼンをイメージしてみて下さい。内容も、言葉も、スライドも、極限までシンプルになっています。
 それは、スティーブ・ジョブズがプレゼンの天才だった、ということだけでなく、彼と、彼のチームが「伝えるべきこと」に焦点を当て、それだけを伝えることに注力したからです。
 まず、今回伝えることの核心を抜き出しましょう。一言で、本当に一言で伝えるとすれば、どこを伝えるのか?
 その内容と、表現を、1行(30文字程度)以内にまとめましょう。できれば、15字以内が望ましいです。
 そのために、「引き算」をしていきます。
 プレゼンの出来は、核心部分の良しあしで決まる、といっても過言ではありません。
 十分に時間をかけ、知恵を絞って、最良の15~30字を生み出してください。
 そうして、核心部分が生まれたら、その核心部分を生み出すための必要な条件をリストアップし、その重要度の順に伝えていきます。
 たとえば、「明日外出するときは傘が必要です」が核心部分だとすると、そのメッセージにおいて必要な条件は「天気予報で降水確率が90%だからです」です。
 ちなみに、必要な条件に必要な条件を挙げると、煩雑になりすぎてしまいます。
 詳細な説明は、質疑応答のコーナーに譲るとして、まずは必要な条件のみピックアップしていきます。
 この、「引き算」で考えるということは、物事の要点と、優先順位を私たちに教えてくれます。この考え方を身に付けることができれば、プレゼンだけでなく、あなたのビジネス全般において恩恵を受けることができるでしょう。